GSAMユーザーマニュアル

第7章 寸法最適化・トポメトリ最適化

寸法設計領域・トポメトリ設計領域

Sizing/Topometry Region ()は、寸法設計領域(DVPROP3)またはトポメトリ設計領域(DSPLIT)を定義するためのオブジェクトです。トポメトリー設計領域には、トポメトリ製造制約を課すことができます。

“Sizing/Topometry”の詳細
Design Type:Sizing

“Sizing/Topometry”の詳細
Design Type:Topometry

設計領域定義

Design Region Definitionは、寸法またはトポメトリ最適化の設計領域を指定します。GSAMでは、シェル要素やシェルボディ・パーツ、バー要素やワイヤーボディ。パーツを選択できます。均質ラティスオプションで設計を行う場合、ユーザーは、ソリッド要素やボディ・パーツも設計領域として選択できます。
複数のボディ/パーツを一つの設計領域を一つの設計領域として選択できます。
設計領域として選択されていないボディやパーツは、寸法・トポメトリ最適により設計も変更もされません。

設計タイプ(寸法またはトポメトリ)

Design Typeは、最適化のタイプ(SizingまたはTopometry)と設計変数の生成方法を定義します。
Type:最適化タイプ
利用できるオプションは、SizingTopometryです。
Sizing (DVPROP3) :寸法最適
Sizingは、シェルボディー(シェル要素)の厚み、およびワイヤーボディ(バー要素)の断面寸法を設計します。DVPROP3文が断面ライブラリーの要素断面を使用してシェルボディまたはワイヤーボディの断面特性と設計変数間の関係を定義します。

Topometry (DSPLIT):トポメトリ
このオプションは要素単位の寸法最適を実行するもので、より設計自由度があります。各シェル要素(CQUAD4)は、異なるPSHELL入力と対応する設計データを指し示す必要があります。

DSPLIT文が元の寸法データを使用し、上記のような要素単位のデータ相関を自動生成します

Design Variable Creation:設計変数の生成
プログラムはシェル要素の板厚やバー要素の断面寸法をコントロールする設計変数を自動生成します。設計変数を生成する2つのオプションがあります。
Independent:単独ボディ
このオプションは、選択ボディごとに1つの設計変数を作成します。トポメトリ最適化の場合、製造制約はシェルボディ個々に適用します。
Linked:結合ボディ
このオプションは、全選択ボディの厚さや寸法をコントロールする単一の設計変数を作成します。トポメトリ最適化の場合、製造制約は選択したボディ全体に適用します。

設計変数

Design Variables (DVAR):設計変数
プログラムが、シェル厚やバーの断面寸法をコントロールする設計変数を自動生成します。
Design Variable Initial Value (INIT):設計変数初期値
INIT=C1+M1*Current di
初期値のデフォルトは、選択ボディの元寸法(Current di)です。これは設計が、元寸法のシェル厚やバーの断面寸法から開始するということです。
前述のDesign Variable CreationがLinkedの場合、初期値は選択されたジオメトリリストの一番目のボディの元寸法になります。
Design Variable Bounds (LB and UB) :設計変数境界
ユーザーは次式で設計変数の境界をコントロールできます
Lower Bound:Max(C2+M2*Current di, MinLB)
ここでC2、M2は係数、Current diは断面寸法の元寸法、MinLBは最小可能値。
Upper Bound:Min(C3+M3*Current di, MaxUB)
ここでC3、M3は係数、Current diは断面寸法の元寸法、MaxUBは最大可能値。

設計目的

設計目的の定義(DOBJ or DINDEX)方法はトポロジー最適化に同じです。設計目的の定義を参照ください。

設計制約

設計制約の定義(DCONS, DCONS2)寸法は、トポロジー最適化に同じです。設計制約の定義を参照ください。

トポメトリ製造制約

利用可能な製造制約は、次の通りです。
Mirror Symmetry:鏡面対称
Cyclic Symmetry:回転対称
Extrusion:押出し
Uniform:同形
トポメトリ設計領域には製造制約を3つまで付与できます(製造制約の結合)。
ユーザーは、Coarse Method (COARSE):コース法を指定し、要素グループ単位のトポメトリ最適化を行えます。
各制約の詳細は次節で説明します。

Mirror Symmetry:鏡面対称

Mirror Symmetry製造制約は、トポメトリ領域内に鏡面対称要件を強制します。参照座標系を指定する必要があります。
鏡面対称のオプションは次の3種です。
MXY:XY面に関して鏡面対称
MYZ:YZ面に関して鏡面対称
MZX:ZX面に関して鏡面対称

鏡面対称

Cyclic Symmetry:回転対称

Cyclic Symmetry製造制約は、指定のトポメトリ領域内に回転周対称を強制します。参照座標系指定する必要があります。
回転対称のオプションは、次の3種です。
CX:X軸中心
CY:Y軸中心
CZ:Z軸中心
回転対称数(n)の指定が必要です。n=5の例をFigure 7-3に示します。

回転対称 n=5

Extrusion:押出し

Extrusion製造制約は、トポメトリ領域内に押出(軸方向に等断面)要件を強制します。参照座標系と押出方向を指定する必要があります。
押出のオプションは次の3種です。
EX:X軸沿い
EY:Y軸沿い
EZ:Z軸沿い

押出し

Uniform:指定平面に平行な面内で同形

Uniform製造制約は、XY or YZ or ZX平面に平行な面内で同形を生成する要件を強制します。
同形のオプションは次の3種です。
UXY:XY平面に平行な面内で同形
UYZ:YZ平面に平行な面内で同形
UZX:ZX平面に平行な面内で同形

XY or YZ or ZX平面に平行な面で同形

UXYZ:XY/YZ /ZXの3平面に平行な面内で同形
この場合、指定領域の節点すべてが1つの設計変数で制御され、XY/YZ/ZXの3平面に平行な面内で同形を生成します。

全方向に同形

製造制約の結合

トポメトリ領域に、同時に複数の製造制約を付加することが必要な場合、領域には3個まで製造制約を与える(製造制約を結合する)ことができます。ただし全ての結合が成り立つわけではありません。可能な結合を以下に示します。

1.2つまたは3つの鏡面対称制約は結合可能
2.1つの回転対称または軸対称制約は、回転対称の軸が鏡面対称面に直交する限り1つの鏡面対称制約と結合可能
3.1つの押出制約は、押出方向が鏡面対称面に平行である限り1つまたは2つの鏡面対称と結合可能
4.1つの押出制約は、押出方向と回転対称または軸対称の軸が同じである限り1つの回転対称または軸対称制約と結合可能

i, j, kをX,Y,Zの巡回置換とすれば、可能な結合は次のように表記できます。
1.Mij and/or Mjk and/or Mki
2.Ci and/or Mjk
3.Ei and/or Mij and/or Mki
4.Ei and/or Ci
5.Ujk and/or Mjk

ユーザーは可能な結合すべてを記憶する必要はありません。もし結合できない製造制約を選択したとしても、GUIがそのような結合を受け付けません。

すべてのトポメトリ製造制約

タイプ製造制約要件
MXYXY面に関する鏡面対称
MYZYZ面に関する鏡面対称
MZXZX面に関する鏡面対称
CXX軸中心の回転対称(n>0)またはX軸中心の軸対称(n>0)
CYY軸中心の回転対称(n>0)またはY軸中心の軸対称(n>0)
CZZ軸中心の回転対称(n>0)またはZ軸中心の軸対称(n>0)
EXX軸沿いの押出し
EYY軸沿いの押出し
EZZ軸沿いの押出し
UXYXY面に平行な面内で同形
UYZYZ面に平行な面内で同形
UZXZX面に平行な面内で同形
UXYZXY, YZ, ZXの3面全てに平行な面内で同形

Coarse Method (COARSE):コース法

トポメトリ最適化では、複数の要素を結合した要素クループ単位で寸法最適化を行うことも可能です。要素グループは、Coarse Methodを用い自動生成されます。
Coarse Methodのオプションは、次の通りです。
None:コースニング(要素のグループ化)しない
要素のグループ化は行わず、要素単位の寸法最適化を演じます。
Number of elements per design variable (CVALUE1) :コースニング要素数入力
1グループあたりの要素数を指定します。1つのグループに対し1つの設計変数が用意されます。
Cell Size:コースニングセル寸法入力
Cell Sizeには、セル寸法(径)またはボックス寸法:Length in X(CVALUE1)、Length in Y(CVALUE2)、Length in Z(CVALUE3)の入力が必要です。ボックス寸法は空間を均一な箱状に分割するために使用します。そして、要素中心が同じ箱に含まれる要素をグループ化します。ボックスの並びは、製造制約が参照する座標系の軸に一致します。

Coaseを使用する利点は設計変数を低減し、感度計算と最適化プロセスの速度を向上してくれることです。ただしCoase要素数を大きくすると、詳細性は低減に向かうこととなり寸法最適の詳細性に近づきます(Coase法は寸法最適とトポメトリ最適間の中間的な詳細性をもたらす手法と言えます)

Symmetry Tolerance (SYMTOL):対称トレランス

Symmetry Toleranceは、対称要素を検知するトレランスを定義するために使用します。デフォルト値は0.001です。Symmetry Identification Method (SYMMET)
対称要素の検知方法を指定します。利用できるオプションは次の通りです。デフォルトはGrids and Center です。
Grids and Center
Grids and Centerオプションは、2つの要素が対称位置にあるかどうかを判別する際、要素のコーナー節点と中心位置の両方を使用します
Center only
Center onlyオプションは、2つの要素が対称位置にあるかどうかを判別する際、要素の中心位置だけを使用します

格子最適

Lattice Optionは、格子の部材断面寸法の設計に使用します。設計領域には、ソリッド要素またはソリッドボディ/パートを選択できます。格子のセル剛性を等価なソリッド要素でモデル化することで、大規模な格子も扱うことができます。

格子セルのモデリング

Lattice Optionは、格子の単位構造(セル)を、等価な剛性のソリッド要素としてモデル化します。このモデル化は、格子構造の個々の部材のジオメトリ表現を不要にし、解析のプレ時間を短縮します。
ソリッド要素に必要なセル剛性は、3つのパラメータ:Lattice Pattern(格子パターン)、Lattice Cell Size(セル寸法)、Lattice Diameter(部材の断面径) の値から自動計算されソリッド要素モデルで使用されます。
Lattice Patternの値を変更すれば、ソリッド要素モデルに変更を加えることなく、格子パターン間の差異検証が行えます。

Lattice Pattern:格子パターン

Built-in Types:内蔵タイプ
Built-in Typesのオプションは次の通りです。ユーザーは格子ライブラリーから目的のセル特性を選択し、利用できます。

Edges (CUBIC1)

Edges with Space3 Diagonals (BCC1)

Double Pyramid (DPYRA1)

Space Diagonals (BCC2)

Edges with Offset Diagonals (DPYRA2)

Extruded Hexagons (HCOMB1)

Extruded Triangles (HCOMB2)

Extruded Triangles (HCOMB3)

Gyroid Surface (GYROID1)

Schwarz P Surface (SCHWAP1)

Schwarz D Surface (SCHWAD1)

Gyroid Halfspace (GYROID2)

Schwarz P Halfspace (SCHWAP2)

Schwarz D Halfspace (SCHWAD2)

User Supplied
User Suppliedオプションで、ユーザー固有のセル特性を与えることができます。User Suppliedを選択した場合、一致するLATMAT id指定し、LATMAT定義を定義する必要があります。詳細については、GENESIS analysis referenceを参照してください。なお格子パターンは直交異方性を仮定します。

Lattice Cell Size
Lattice Cell Sizeは、単位格子(セル)のエッジ長さです。

Lattice Diameter
Lattice Diameterは、格子部材の断面径または断面厚さを定義します。この値は、寸法最適またはトポメトリ最適化を実行する際の設計変数の初期値として使用されます。

コースニング

トポメトリ最適化を実施する際は、コースニングの使用を推奨します。コースニング寸法は、単位格子(セル)寸法と同じか、大きい値とします。

格子最適結果のポスト処理

格子最適化の結果は、ソリッド要素上に要素寸法結果として表示されます。ソリッド上に格子の直径を表示する場合は、Dimension Indexで2を選択します。

寸法最適/トポメトリ最適で利用できる応答

寸法最適/トポメトリ最適で利用できる応答(DRESP1)は、トポロジーで利用できる解析応答およびトポグラフィーで利用できる応答を参照ください。

寸法最適/トポメトリ最適の生成ファイル

GENESIS 解析および設計ファイルのサマリー

ファイル内容ファイルの発生ファイル名
入力データ常に自動生成genesis.dat
出力データ常に自動生成genesis.out
計算ログ常に自動生成genesis.log
解析ポスト ファイルユーザー要求genesisxx.ext
設計履歴 ファイル自動生成genesis.HIS
リスタート情報 ファイル自動生成genesis.RST
設計履歴グラフ ファイル自動生成genesis.html
要素寸法結果 ファイル自動生成genesisOPOSTxx.ext
シェルのソリッド化 ファイル自動生成genesisSSOLxx.dat
xx=最適化サイクル番号
ext=op2またはpch

GSAMで作成される入力データファイル名のデフォルトは genesis.dat です。
出力データ 、解析ポストファイル、設計履歴ファイルについては、プログラム出力 (pname.out) 解析ポストファイル(pname.pch or pname.op2)および設計ヒストリーファイル(pname.HIS)を参照ください。

次節ではトポメトリ専用の2つの結果ファイル、要素寸法ファイル (pnameOPOSTxx.ext)シェルのソリッド化ファイル(pnameSSOL.dat)について説明します。

要素寸法ファイル (pnameOPOSTxx.ext)

要素寸法は、結果ファイルpnameOPOSTxx.extに出力できます。ここでpnameはインプット・ファイル名、xxは最適化サイクル番号で、extはファイルフォーマットに従い設定されます。extがOP2の場合はOUTPUT2フォーマット(バイナリ―形式)、extがpchの場合はPUNCHフォーマット(ASCII形式)です。GSAMはPUNCHフォーマットのみサポートします。

シェルのソリッド化ファイル(pnameSSOL.dat)

シェル/バー要素をソリッド要素へ自動変換した可視化用の要素データーを、pnameSSOL.datに出力できます。本ファイルをポスト処理に利用することでシェル/バー要素をソリッド要素として確認できます。このファイルはGENESIS入力ファイルと同じ形式で、pnameSSOLxx.dat というファイル名です。ここで、pname は入力ファイル名と同じ名称、xx は設計サイクル番号となります。
このファイルは、要素寸法結果を STL形状にエクスポートするときにも使用されます。

要素寸法結果のポスト処理

Element Sizing Plot()は、シェル/バー要素の断面寸法コンターを表示するために使用します。

Figure 7-7
Element Sizing Plot

Dimension Index:寸法インデックス
Dimension Indexは、表示したい寸法結果アイテムを選択するために使用します。

シェル厚みの場合のDimension Indexは、1(d1)です。
均質格子の場合のDimension Indexは、2(d2)です。
バー要素(管断面)の場合、Dimension Index1(d1)は内径、Dimension Index2(d2)は管の肉厚です。
バー要素のその他断面についてはGENESIS analysis referenceのPBARLを参照してください。

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