形状最適化原理
形状最適化 (従来からの形状最適化、トポグラフィー、フリーフォームを含む) の基本的な考えは、新たなグリッド位置を計算するために摂動(Perturbation)と設計変数を定義することです。
Design Variable to Grid Location (DVGRID):グリッド位置に対する設計変数
新たな節点位置(DVGRID)は次のように定義できます。
ここで、
x0, y0, z0は、元の節点位置(GRIDデータに入力した座標値)
N1, N2, N3は、摂動方向
COEFFiは、摂動の大きさ
XDVIDiは、摂動の大きさの倍率として作用する設計変数
従来の形状最適では、ユーザーが各グリッドに対する設計変数(DVGRID)データを定義する必要があります。一方、トポグラフィーおよびフリーフォームでは、プログラムが自動的に DVGRID データを作成します。
設計領域の定義
Topography Region (DTGRID)オブジェクト()は、設計領域を指定し、領域内のグリッドに摂動を定義するために使用します。設計領域には、製造制約を課すことができます。
Design Region Definition:設計領域定義
Design Regionは、トポグラフィー設計領域を指定します。グリッドまたはサーフェスのみがトポグラフィー設計領域として選択できます。 複数のサーフェスを選択して、1つの設計領域として定義できます。
複数サーフェスが1つの設計領域として選択されると、それらサーフェスのグリッドはリンクされ1つのグループとして扱われます。製造制約はサーフェスではなく、このグループ全体の節点に適用されます。
設計領域として選択されていないサーフェスは、トポグラフィー最適によって設計も変更もされません。
Perturbation:摂動
Perturbation:摂動は、グリッド位置の摂動量と摂動タイプを定義します。トポグラフィー最適化では、グリッドでの摂動は常に選択サーフェスの法線方向です。
Shape Type:形状タイプ
摂動がコントロールする形状パターンを定義します。利用できるオプションは、Cone、Line、Uniformの3種です。それぞれのパラメータは、次の通りです。
Cone:円錐形
Cone形状を定義する3つのパラメータがあります。
Maximum Height
グリッドの摂動上限(Hight)を規定するパラメータ
Minimum Width
グリッドの摂動上限(Hight)に達する位置での最小幅(Width)を規定するパラメータ。独立設計変数を生成するために内部的に使用されます。一般にWidthが大きいほど、内部生成される独立設計変数の数は少なくなります。
Spread
隣接する設計変数間の影響を規定するパラメータ。Edge Grid Designオプションが「Skip Edges」の場合、設計グリッドと設計領域境界の間に移行ゾーンが与えられます。一般に、Spreadが大きいと移行ゾーンも大きくなります。
Line:ライン
Maximum Height
グリッドの摂動上限(Hight)を規定するパラメータ
Uniform:均一
Maximum Height グリッドの摂動上限(Hight)を規定するパラメータ。Uniformの場合、設計領域内の全ての節点が同じ量移動します。
Edge Grid Design(EDGEM):エッジグリッドの設計
これは、トポグラフィー領域境界(エッジ)に位置するグリッドを設計するかどうかを規定します。利用できるオプションは次の4オプションです。
Skip Edges (NOEDGE):エッジをスキップする
領域境界(エッジ)にあるグリッドを設計しない
Design Edges (NOEDGE):エッジを設計する
領域境界(エッジ)にあるグリッドも設計する
Indirectry Design Edges (INEDGE):間接的にエッジを設計する
トポグラフィー領域境界(エッジ)の近接グリッドが生成した摂動のため領域境界(エッジ)のグリッドが設計される可能性があります。例えば領域内のグリッドがConeタイプの摂動である場合、Spreadの内側にあるグリッドに影響します。
Skip Selected Edges (NDGRID):選択したエッジをスキップする
選択された領域境界(エッジ)あるグリッドを設計しない
デフォルトオプションはSkip Edgesです。設計領域と非設計領域がエッジ上のグリッドを共有していない場合、Skip Edgesを推奨します。例えば、設計領域と非設計領域の間が接触で接続されている場合です。
トポグラフィー領域の「エッジ」とは?
トポグラフィー領域境界のエッジとは、選択したサーフェスパート群の外郭エッジのことです。選択パート間のエッジは、領域内に在りますので領域境界のエッジではありません。
Perturbation Method (PERTM):摂動法
Perturbation Methodでは、摂動および設計変数の計算に使用するメソッドを指定します。次の3つのオプションが利用できます。
Link
Basic
Freeform
「Link」の場合、従属変数が用いられます。「Basic」または「Freeform」の場合、従属変数は使用されません。
Freeformの場合、Shape TypeをUniformにできません。
Freeformの場合、プログラムはMaximum Widthを使用し、各設計変数に含まれる設計グリッドを察知します。これは、フリーフォーム最適化のCoarse Method:コース法に相当します。
BasicやLinkに対するFreeFormの利点は、FreeFormは最大高さを制約するのに追加の制約や従属変数を必要としないことです。Freeformで作成したビード・パターンは、LinkやBasicで作成したビードよりもシャープなになります。
デフォルトは、Shape TypeがコーンかつMaximum WidthまたはSpreadが0でないならばLinkです。その他の場合はBasicがデフォルトです。
トポグラフィー設計変数
Design Variables (DVAR):設計変数
プログラムがトポグラフィー最適化用の設計変数を自動生成します。設計変数は、グリッドの実際の摂動量を得るための倍率として作用します。設計変数をDViとすると、摂動量はDVi*Maximum_perturbationで計算されます。
Design Variable Initial Value (INIT):設計変数初期値
INITのデフォルト値は、初期擾乱のRINT値で変わります。
RINT=-1.0のときのデフォルト値は0.001。
RINT≧ 0.0のときのデフォルト値は0.0RINITは、以下で説明する Initial Randomness(RINT)パラメータです。
INIT=0.0かつRINT=0.0のとき、設計はモデルの元形状から開始します。
Design Variable Bound (LB and UB) :設計変数境界(下限と上限)
ユーザーは、設計変数の境界をコントロールできます。境界値のデフォルト値は[-1,1]です。
グリッドをサーフェスの一方の側にだけ移動させたい場合は、LB=0.0またはUB=0.0のどちらかを使用します。
Initial Randomness (RINT):初期擾乱
Initial Randomness (RINIT)パラメータは、設計変数の初期値に与える擾乱をコントロールします。RINIT値は、-1.0、0.0または0.0より大きな値です。
RINIT=-1.0の場合、設計変数の初期値に擾乱を与えます。各設計変数の初期値には、Initial Value(デフォルト値:0.001)でスケーリングされるランダム値が設定されます。
ユーザー提供の元形状から設計を開始する際は設計変数の初期値を0.0に設定しますが、要素・パートがシェルの場合、プログラムが設計領域の平坦なところゼロ勾配を計算する原因となり、これが最適化を進行させない可能性があります。これを防止するために各設計変数の初期値に擾乱を与えます。
RINIT=0.0の場合、初期擾乱を加えません。
トポグラフィーがソリッド要素のパートで使用される場合、設計領域が平坦で設計変数がゼロのところでも勾配はゼロにならないため、設計変数に初期擾乱を与えないで開始しても構いません。
RINIT>0.0の場合、初期値に関する相対範囲を定義します。
設計目的の定義
トポグラフィー最適化のObjectives(DOBJ or DINDEX)を定義する方法は、トポロジー最適化と同じです。
詳細は、トポロジー最適の設計目的の定義を参照してください。
設計制約の定義
トポグラフィー最適化のConstraints(DCONS or DCONS2)を定義する方法は、トポロジー最適化と同じです。
詳細は、トポロジー最適の設計制約の定義を参照してください。
トポグラフィー製造制約
トポグラフィー製造制約(SYM)は、製造要件を強制するために用います。利用できる製造制約は、次の通りです。
Mirror Symmetry:鏡面対称
Cyclic Symmetry:回転対称
Extrusion:押出し
Uniform: 参照面に平行な面内で同形
トポグラフィー領域には、3つまで製造制約を適用できます(Combining Fabrication Constraint)。
任意で、 ビード割合のコントロールを指定できます。これはトポグラフィー領域で移動を与える節点の割合をコントロールします。
上記製造制約の詳細は、次節で説明します。
Mirror Symmetry:鏡面対称
Mirror Symmetry製造制約はトポグラフィー領域に鏡面対称要件を課します。参照座標系の指定が必要です。
Mirror Symmetryのオプションは、次の通りです。
・MXY:XY面対称
・MYZ:YZ面対称
・MZX:ZX面対称
Cyclic Symmetry:回転対称
Cyclic Symmetry製造制約はトポグラフィー領域に回転対称要件を課します。参照座標系の指定が必要です。
Cyclic Symmetryのオプションは次の通りです。
・CX:X軸中心
・CY:Y軸中心
・CZ:Z軸中心
ユーザーは回転対称数(n)を指定する必要があります。
Extrusion:押出し
Extrusion製造制約はトポグラフィー領域に押出要件を課すために使用します。参照座標系の指定と押出方向の選択が必要です。
Extrusionのオプションは次の通りです。
・EX:X軸沿いに押出し(等断面)
・EY:Y軸沿いに押出し(等断面)
・EZ:Z軸沿いに押出し(等断面)
Uniform: 参照面に平行な面内で同形
Uniform製造制約は参照面に平行な面内で同形または面法線方向に全移動の要件を課します。
Uniformのオプションは次の通りです。
・UXY:XY面に平行な面内で同形
・UYZ:YZ面に平行な面内で同形
・UZX:ZX面に平行な面内で同形
・UXYZ:面法線方向に全移動
UXYZオプションは設計領域全体の節点を1つの設計変数でコントロールします。そのため領域内の全節点が面法線方向に同じ量移動します。
Combining Fabrication Constraints:製造制約の結合
1つのトポグラフィー領域に複数の製造制約が同時に必要な場合があります。その場合は、製造制約を1領域あたり3種まで使用できます。ただし、その全てが結合できるわけではありません。以下に許容される結合を記します。
1.2つまたは3つの鏡面対称制約
2.1つの回転対称または軸対称制約は、回転対称の軸が鏡面対称の面に直交する限り、1つの鏡面対称と結合できる
3.1つの押出制約は、押出方向が鏡面対称の面に平行である限り1つまたは2つの鏡面対称と結合できる
4.1つの押出制約は、押出方向と回転軸または軸対称の軸が同じである限り1つの回転対称または軸対称製造制約と結合できる
上記の可能な結合を記号標記すると、次のようになります。
i, j, kをX, Y, Zの巡回置換とすれば、
1.Mij and/or Mjk and/or Mki
2.Ci and/or Mjk
3.Ei and/or Mij and/or Mki
4.Ei and/or Ci
5.Ujk and/or Mjk
ユーザーは可能な結合すべてを記憶する必要はありません。GUIから選択する製造制約の3リストの場合、プログラムが、選択に基づき互換性のない製造制約を自動的に除外します。
すべてのトポグラフィー製造制約一覧
タイプ | 製造要件 |
---|---|
MXY | XY面に関する鏡面対称 |
MYZ | YZ面に関する鏡面対称 |
MZX | ZX面に関する鏡面対称 |
CX | X軸中心の回転対称(n>0)またはX軸中心の軸対称(n>0) |
CY | Y軸中心の回転対称(n>0)またはY軸中心の軸対称(n>0) |
CZ | Z軸中心の回転対称(n>0)またはZ軸中心の軸対称(n>0) |
EX | X軸沿いの押出し |
EY | Y軸沿いの押出し |
EZ | Z軸沿いの押出し |
UXY | XY面に平行な面内で同一 |
UYZ | YZ面に平行な面内で同一 |
UZX | ZX面に平行な面内で同一 |
UXYZ | 全ての方向に同一 |
Symmetry Tolerance (SYMTOL):対称トレランス
Symmetry Toleranceは、対称グリッドを検知するためのトレランスを規定します。
デフォルト値は、絶対値の0.001です。このパラメータの使用に当たっては要素寸法を考慮してください。
Bead Fraction Control (BEADFR): ビード割合のコントロール
Bead Fraction (FRACT):ビード割合
Bead Fractionは、移動を与えるグリッドの割合をコントロールします。Bead Fractionは、0.0~1.0間の実数です。例えば、値を0.0とすると移動できるグリッドはありません。一方で値を1.0とすると全グリッドが移動できます。
Bead Fraction Bound Type(BTYPE):ビード割合の境界タイプ
オプションは、次の3つです。
Upper:デフォルト
Bead Fraction値を制約上限に使用(最大で、Bead Fraction相応のグリッドの移動を許容する)
Lower
Bead Fraction値を制約下限に使用(少なくとも、Bead Fraction相応のグリッドの移動を強制する)
Both
Bead Fraction値を制約上限と制約下限の両方に使用(Bead Fraction相応のグリッドの移動を強制する)
トポグラフィーで利用できる応答
トポグラフィーで利用できる応答は、トポロジーで利用できる解析応答を参照ください。ただしトポグラフィーはデザインの過程で要素密度を変化させないため、Topology Mass Fractionは除かれます。
トポグラフィー設計には、トポロジー設計では無かった2つの応答が追加されます。Mass(MASS):質量とVolume (VOLUME):体積です。詳細は次節で説明します。
DRESP1/DRESP2/DRESP3データの書式は、TRESP1/TRESP2/TRESP3データの書式と同じです。TRESP1はトポロジー設計の応答をタグ付けするのに使用されますが、DRESP1はトポグラフィー・フリーフォーム・サイジング/トポメトリなどのパラメトリック設計の応答をタグ付けするのに使用されます。
Mass (MASS):質量
Massは、選択されたボディ/パーツ群の質量またはモデル全体の質量です。
ここで\({x_i}\)は、プログラムが内部生成するトポロジー設計変数で0.0~1.0間の値を取ることができます。\({V_i}\)は各要素の体積、nは全要素数、\({ρ_0}\)は材料の密度です。
トポロジー最適化領域が指定されていない場合は\({x_i}=1.0\)です。この応答は単一のスカラー値です。
Volume (VOLUME):体積
Volumeは、選択されたボディ/パーツ群の体積またはモデル全体の体積です。
注)トポロジー設計単体問題の体積は有用ではありません。トポロジー設計では、体積は変化しません。
トポグラフィー最適の生成ファイル
GENESIS 解析・設計ファイルのサマリー
ファイル内容 | ファイルの発生 | ファイル名 |
---|---|---|
入力データ | 常に自動生成 | genesis.dat |
出力データ | 常に自動生成 | genesis.out |
計算ログ | 常に自動生成 | genesis.log |
解析ポスト ファイル | ユーザー要求 | genesisxx.ext |
最適化履歴 ファイル | 自動生成 | genesis.HIS |
リスタート情報 ファイル | 自動生成 | genesis.RST |
最適化経過グラフファイル | 自動生成 | genesis.html |
形状変更 ファイル | 自動生成 | genesis.SHP |
ext=op2またはpch
GSAMで作成されるインプット・ファイルのデフォルト名は genesis.dat です。
トポロジーと共通する出力ファイルについては、プログラム出力、解析ポストファイル、および設計ヒストリーファイルの説明を参照ください。ここでは、トポグラフィー設計で生成される形状変化ファイルについてのみ次節で説明します。
Shape Change File (pname.SHP): 形状変化ファイル
トポグラフィー設計の設計形状はpname.SHP という名のポストファイルに出力されます。ここでpnameには、入力ファイル名が設定されます。同ファイルには、元形状の変位として形状変更情報が保存されます。
形状変化結果のポスト処理
最適化が終了したら、ユーザーはShape Change Plot()で形状変更を見ることができます。任意にShow Deformed Model ()を追加すると、形状変更されたモデルでの変形図を見ることができます。
Shape Change Plot:形状変化プロット
Shape Change Plotは、各節点の変位として形状変更を表示します。利用できるプロットオプションは次の通りです。
Total :グリッド位置の変位 大きさ
X :グリッド位置の変位 X成分
Y :グリッド位置の変位 Y成分
Z :グリッド位置の変位 Z成分
Normal to Surface:グリッド位置の変位 面法線方向
Show Deformed Shape Model:形状変化付きの変形図の表示
Show Deformed Model ()を追加することで、形状変更されたモデルでの変形図を表示できます。
なお、形状変更されたモデルをプロットするにはShape Change Plotを指定する必要があります。
メッシュゆがみの回避
メッシュゆがみは、次を使用することで回避または修正できる場合があります。
・Mesh Smoothing(MSMOOTH):メッシュ・スムージング
・Automatic Distortion Constraints(SHAPECN):ゆがみ制約
・設計変数の境界や摂動寸法を狭めてみる
Mesh Smoothing (MSMOOTH):メッシュ・スムージング
自動メッシュ・スムージングは、解析パラメータMSMOOTHでコントロールされます。
詳細は、Mesh Smoothing (MSMOOTH)を参照してください。
Distortion Constraints (SHAPECN):ゆがみ制約
自動ゆがみ制約(DOPT, SHAPECN, 値)における値には、0, 1, 2, 3を指定できます(デフォルトは2)。
・SHAPECN =0は、プログラムにゆがみ制約を使用しません
・SHAPECN =1は、プログラムに設計要素のヤコビアンが負となるのを回避する内部制約を付加します
・SHAPECN =2は、=1に似ていますが、加えてDISTORT解析の入力で定義されるゆがみ計測がERRORを出さないよう制約を付加します
・SHAPECN =3は、=2に似ていますが、ERRORに代えてWarning出さない制約を付加します
なおDOPTデータは、GENESISツールバーのその他GENESIS入力データ()を通して追加できます。