1.GSAM/GTAMのひずみエネルギー応答
GSAM/GTAMでは2種のひずみエネルギー応答:Total Strain Energy(全ひずみエネルギー)とMechanical Strain Energy(メカニカルひずみエネルギー)を使用できます。周知のようにTotal Strain Energy応答は、外部荷重(力・圧力)を受ける部材の構造最適化の目的として一般に使用される応答です。ただし熱の影響を含まないため、熱応力を受ける部材の構造最適化には適しません。一方のMechanical Strain Energy応答は、熱の影響を考慮するため、熱応力を受ける部材あるいは熱応力と外部荷重(力、圧力)を受ける部材の構造最適化に使用できます。
熱応力を受ける部材のトポロジー最適化の二例を以下に示します。
2.熱応力を受ける部材のトポロジー最適化例
解析モデルは、熱応力解析モデル(熱解析と静的構造解析の連成解析)です。設計領域は次図に示すような2次元平板です。左辺と右辺に異なる温度を規定、四コーナーが固定された領域のトポロジー最適構造を求めます。
剛性最大化条件を定義することを考えます。この場合、熱応力解析から得られるMechanical Strain Energy応答の最大化を目的にとります。そうすることで構造を維持するための荷重(温度)が最大化され、次図の左に示したような構造を得ることができます。もしTotal Strain Energy応答の最小化を目的にすると、右図に示したような固定位置に繋がらない不適当な構造になります。なお両ケースとも材料体積の上限を30%に制約しています。
3.熱応力と外部荷重(力)を受ける部材の構造最適化例
前章の熱応力解析モデルの右辺中央点に静荷重が加えられた解析モデルを用います。このような解析モデルを使用する場合、GENESIS最適化のために、熱応力のみのロードケースと外部荷重のみのロードケースに分割する必要があることに注意してください。分割することで、GENESISは、熱応力解析のロードケースのMechanical Strain Energy応答と外部荷重(力)のロードケースのTotal Strain Energy応答を認識することができます。
前章の例と同様に剛性最大化条件を定義することを考えます。2つの最適化目的を定義します。一つは熱応力解析のロードケースから得られるMechanical Strain Energy応答を最大化する目的です。もう一つは外部荷重(力)のロードケースから得られるTotal Strain Energy応答を最小化する目的です。結果として次図左の構造を得ることができます。次図右は両方のロードケースのTotal Strain Energy応答を最小化した場合の結果です。なお両ケースとも材料体積の上限を30%に制約しています。
4.まとめ
熱応力を受ける部材のひずみエネルギー応答については、熱の影響を考慮できるMechanical Strain Energy応答を使用できます。同じロードケースに熱応力と外部荷重(力、圧力)の両方を含む解析モデルの場合、ロードケースを分ける(一つは熱応力のみ、もう一つは外部荷重のみ)という前処理が必要です。また、応力や変位などの解析応答については、元の熱応力と外部荷重の両方が存在する解析モデルから得ることができます。
注: GSAM/GTAM サンプル・マニュアルには、この例に類似した例があります。ATP021です。