GSAMユーザーマニュアル

第2章 構造最適化コンセプト

数値最適化

数値最適化法は汎用的で多彩なツールを設計の最適化に供します。構造設計における研究と事例は拡大し続けており、エンジニアリグ現場に浸透する方法を見出しつつあります。現代の最適化の基礎を形成するメソッドは約40年前に開発され、非線形構造設計へ適用が1960年にSchmitにより初めて示されました。1975年以降の構造設計の研究の多くは、解析コストの高い構造設計問題に対する効率的なメソッドの開発に向けられました。そしてこれは、オリジナルの問題の本質的な特徴を維持しつつ高い効率を供することのできる近似法に至りました。 ここで最適化の観点から一般的な設計タスクを定義します。構造最適化の場合、オリジナルの問題の近似を作成し、オプティマイザーが近似問題を解きます。この優位点は実際の最適化プロセスの間にFEM解析を繰り返しコールする必要がないことです。これは構造設計全体にかかるコストを大きく低減します。GENESISの場合、OmniQuestが開発したDOTやBIGDOTが近似問題を解くために使用されています。構造最適化法では、構造最適を効率的に実施するために考案された技術を紹介します。GENESISに含まれるこれらの技術は、他のアプリケーションと比較して構造最適を効率的に実行することに寄与するでしょう。 数理計画法(数値最適化のフォーマルな表現)は、希少資源の割り当て問題に非常に汎用的な枠組みを提供するもので、基本的なアルゴリズムはオペレーションズリサーチに由来します。工学事例では、構造設計、化学反応、空水力設計、制御システム設計、機械部品設計、システムズ設計、etc…があります。最適化問題の記述は、従来からの設計問題の記述とよく似ているので、適用できる設計タスクは、無数にあります。

一般的に、数値最適化は非線形の制約つきの問題を解きます:

   関数F(X)の値を最小化する設計変数の組合せ\( X_i; i=1, N\)を求めよ  (Eq. 2-1)

   ただ、次の制約のもとで。

\( Gj(X) ≤ 0; j=1, M\)             (Eq. 2-2)

\( Xi^L ≤ Xi ≤ Xi^U; i=1, N\)            (Eq. 2-3)

(Eq. 2-1)は設計変数ベクトルXの関数である目的関数です。 (Eq. 2-2)は不等式で示された制約条件です。これは\(h_k(X)=0; k=1, L\)の等式制約を包含します。等式制約の場合、不等号の向きが異なる2つの不等式で与えることができます。 (Eq. 2-3)は目的関数Fの最小を求める際の探査領域を定義するもので、設計変数Xに制限を与えます。同式で定義された境界は、副次的な制約として参照されます。

このような定式化の一般性を明確に理解することで、対処できる問題の幅が明確に理解できるようになるでしょう。ただし現在のテクノロジーにはいくつかの重要な制限があります。第一は、目的関数と制約関数は、連続かつ滑らか(切れ目なく微分可能)であることが仮定されています。経験に照らすと、この仮定は実践からの要件よりも理論的であり、実際の設計では日常的に違反しています。二番目は、Xに含まれる設計変数は、連続であるということです。つまり、規格表から部材断面を選択するようなことは困難です。例えば、設計変数としてコンポジット・パネルのプライ数を扱うことはできません。プライ数代わりに板厚を連続変数として取り扱い、その結果を整数に丸めることで相当するプライ数を得ます。離散変数を処理するメソッドが存在しないわけではありません。現実のエンジニアリングに広く適用し得る効率性を欠いているのです。OmniQuestでは、このようなケースを取り扱えるソフトウェアを開発しており、将来的に追加する計画です。最後に、Xにおいて制約される設計変数の数に対する制限は理論的にありません。しかしながら「ブラックボックス」として最適化を使用しようとして単に解析と最適化プログラムを連結するならば考慮できる設計変数の数は制限されます。

前述の一般化した問題の記述は、設計現場で慣れ親しんだ事にたいへんよく似ています。たとえば、種々の設計条件を満たす構造部材の寸法を決めたい場合を想定します。普通、質量を最小にしたいので、目的関数F(X)は構造の質量であり、それは寸法変数の関数です。ただし、応力、たわみ、座屈それにもしあれば動的応答の限界も考慮しなければならないでしょう。構造を有限要素の集合としてモデル化すれば、指定の荷重条件における要素の応力を計算できます。そのとき応力限界は次のように表せます。

\(σ^L ≤ σ_{ijk} ≤ σ^U\)                (Eq. 2-4)

ここで、iは要素番号、jは応力成分、kは荷重条件です。圧縮と引張の応力限界は、それぞれ\(σ_L\)と\(σ_U\)です(ミーゼス応力を応力基準に用いる場合は\(σU\)のみ使用)。(Eq. 2-4)は最適化の一般的な定式化とは違っているように見えますが、次のように(Eq. 2-2)の形に容易に変換できます

\( g_1(X) = (σ^L – σ_{ijk}) / |σ^L| ≤ 0\)          (Eq. 2-5)

\( g_2(X) = (σ^U – σ_{ijk} / |σ^U| ≤ 0\)          (Eq. 2-6)

このように最適化タスクの記述は、構造設計タスクの記述に本質的に同じです。

(Eq. 2-5)と(Eq. 2-6)の分母は、正規化のためのファクターです。これはそれぞれの制約を等価な基準で取り扱うためのもので重要です。例えば応力制約の値が-0.1で変位制約の値が-0.1であれば、それは、どちらの制約もその制約境界の10%以内を指します。正規化しないと、応力上限が20,000.0の場合、応力値が19999.9 (上限の0.1以内)の値のみ検知します。この僅かな応力差は、荷重、材料特性やその他物理パラメーターにとっては無意味な精度になるからです。

最適化で関数関係が陽であるという仮定がしばしば用いられますが、これは正しいとは言えません。それは設計変数Xの提案値に対する目的関数と制約関数を単に評価できればよいからです。

設計ツールとして最適化を使用することには、いくつかの利点があります。従来の設計手法と比べると、一般に多くの設計変数を検討できます。例えば新しい設計環境では、設計をガイドしてくれるほどの多くの経験がないかもしれませんが、最適化が製品を大きく強化するような予期しないよい結果をもたらす可能性があります。最後に最適化の最も効果的な用途の一つは、単純なモデルを使用して設計早期にトレードオフ検証を行うことです。そうすることで、設計の比較ポイントが大きく含まれる最適設計の形で比較できます。

一方で最適化には注意すべき欠点があります。結果の品質は、元となる解析の良さに依存します。FEM解析の場合、それは実構造がモデル化されたものであることに留意すべきです。つまり重要な制約を無視したり漏らしたりすると、最適化はそれをそのまま用い危険な設計ではないにしても無意味な設計へ導くでしょう。また最適化により、現存する隠れた安全要因を落としてしまう危険があります。このような意味で最終製品への唯一の手段としてではなく、設計ツールとして最適化の使用を考える必要があります。

最適化が有用であることに同意頂ける場合、そのアルゴリズムがどのように設計問題を解くのかを理解しておくことは重要です。以下に、DOTプログラムに含まれている基本的な最適化プロセスを概説し、使用する数値最適化技術について洞察したいと思います。 たいていの最適化アルゴリズムは、まさに優れたエンジニアがすることを行います。彼らは改善を導く既存設計に対する変化を見つけようと試みます。つまり、次式のように旧い設計に変更を加えた新しい設計を探索します。

\(X^{new} = X^{old} +δX\)                (Eq. 2-7)

最適化アルゴリズムは、2段階のプロセスになることを除けば、ほとんど同じ式を使用します。

\( X^{q+1} = X^q +αS^q\)                (Eq. 2-8)

(Eq. 2-8)の\(αS^q\)は、(Eq.2-7)のδXに相当します。ここでqは、最適解へ到達するのに必要な数値探索の繰り返し数です。エンジニアは、初期設計\(X^0\)を提供しなければなりませんが、初期設計が設計可能域である必要はなく、(Eq. 2-2)に示す不等式制約を満たしていなくてもかまいません。最適化は設計を改善するであろう探索方向\(S^q\)を決定します。設計が初期に実行可能な場合、探索方向は制約を違反することなく目的関数を減少させるでしょう。もし初期設計が実現不可域の場合、目的関数が増加することを犠牲にしてさえも探索方向を実現可能域のほうへ向かわせるでしょう。

次の問題は、新たな探索方向を見つけなければいけなくなる前に、\(S^q\)の方向にどれだけの距離を動かせるかです。これは、設計をできるだけ改善するスカラー・パラメータα[1]の値を探索していることなので「One-Dimensional Search:一次元探索」と呼ばれています。設計が実現可能で目的関数を低減している場合、\(g_j(X)\)を正にしたりXの各成分の境界(副次制約)を違反することなくF(X)をできるだけ低減してくれるαの値を求めます。設計が初めに実現不可域の場合、可能ならば制約違反を乗り越えるαの値を探索するか、そうでなければできるだけ実行可能域に近い設計に至らせるでしょう。実際これは、エンジニアが同じ条件下でまさに行うことです。違いは、最適化を使用するケースでは膨大なコンピューター出力の検討を省けることです。 探索方向Sを決定するための多様なアルゴリズムがあります。同様にαの値を見つるための多様なアルゴリズムがあります(参考文献[1])。αを決めることは、概念的にシンプルなタスクです。たとえば、αのいくつかの値を選択して、目的関数と制約関数を計算することができます。次に多項式を当てはめ、F(X)を最小化するか、または gj(X)をゼロに向かわせる値を決定します。 設計を改善する方向を選択したらαの正の最小値が必要な値です。最適化問題の解き方については、DOT user’s manual並びに参考文献[1]を参照してください。

参考文献) [1] Vanderplaats,G.N.,Numerical Optimization Techniques for Engineering Design; with Applications,3rdED., Vanderplaats Research & Development, 1999.

構造最適化法

最先端の構造最適化は、他の適用分野に比べて発達しています。ここでは、GENESISが使用している方法の概要を示すために、構造最適化プロセスの重要ないくつかの要素について概説します。 重要なコンセプトは、FEMと最適化を単に結合した場合に必要となる多くの有限要素解析を実施することなく構造設計問題を解くことです。これを達成するために近似を使用しても解析モデルの大事な特徴は保つことへの理解は重要です。つまり最適化の間に多数のFEM解析を実施できた場合の設計と同じ設計を最終的に得るでしょう。 GENESISに含まれる基本的な最適化プロセスは、次の10ステップに要約されます。

  1. すべての入力データの前処理ならびに全ての反復的でない処理(例えば、データチェック、内部テーブルの作成、プログラム・フロー全体のセットアップ)を実行する
  2. 初期設計に対する有限要素解析を実行する。設計目的と全ての制約を評価する
  3. 全ての制約をスクリーニングし、重要かそれに近い制約のみを保持する。一般に2nないし3n個の制約を残す。nは独立な設計変数の数
  4. 目的関数と保持した制約に含まれる応答に対する感度解析をおこなう
  5. 感度解析から元の問題に対する近似を作成し、それをDOTまたはBIGDOTオプティマイザーを用いて解く
  6. 設計変数の変更が不可能な場合は終了する。これを、「ソフト収束」と呼ぶ
  7. 設計変数が変更された場合は解析データを更新し、その有限要素解析を行う
  8. 有限要素解析から得た正確な目的関数と、全ての制約条件を評価する
  9. 設計が改善されず、かつ全ての制約条件が指定のトレランス内の場合は終了する。この終了を「ハード収束」と呼ぶ。
  10. 進捗が依然最適解に向かっているならば、「1設計サイクル」が終了したと言う。そして、ステップ3に戻りプロセスを繰り返す

以上の要約から、構造最適化プロセスの重要な構成要素は、有限要素解析、制約スクリーニング、感度解析、近似最適化問題の生成と実行、収束に至った際の判定、であることが分かります。このマニュアルの読者は、解析処理に慣れているものと想定します。ここではGENESの設計能力全体を理解頂けるよう設計最適化プロセスの重要な部分を概説しました。

制約スクリーニング

現実の構造設計は満足させるべき非常に多くの制約があることは、第一位に注目すべきことです。たとえば、構造を数百ないし数千の大きさの有限要素で構造をモデル化すると仮定します。複数の異なる荷重条件下で各要素のいくつかの位置で応力を抽出してもよいとします。仮にミーゼス応力を指定値\(σ_a\)以下に制限するのであれば、\(σ_{ijk}≦σ_a\)(iは要素番号、jは応力抽出位置、kは荷重条件)です。そうすると明らかにijkの組み合わせは、100万を超える非常に大きな数になります。

最適化プロセスは制約の勾配を必要とするため一回の有限要素解析のコストを超えてしまうような非常に高コストな設計感度評価プロセスへ導く可能性があります。そこで制約をスクリーニングし、現在の設計サイクルで重要か潜在的に重要な制約だけを保持する処理が行われます。制約審査は2段階の処理です。まず、例えば-0.3(制約境界から30%以内)よりも負の制約をすべて削除します。次に、残された制約群を探索し、構造の小領域で指定された数(例えば20)の制約を除くすべての制約をさらに削除します。その理由は、構造内の多くの近接点はほぼ同じ応力であるからです。つまり数個の応力応答だけが設計プロセスを指揮するのに保持する必要があります。

勾配計算

現設計サイクルで保持する特定の応答を得たら、次のステップはそれらの勾配(感度)を評価することです。設計変数Xに関する静的応答(例えば、応力・変位・ひずみエネルギーなど)の感度Rは次式のように微分の連鎖則により決定されます。

\(\frac{dR}{dx} ₌ \frac{\partial R}{\partial X} + \frac{\partial R}{\partial U}\frac{\partial U}{\partial X}    \)                  (Eq. 2-9)

支配するモデル全体の釣り合い式([K]U=F)を用いれば、変位感度は次式で決定されます。

\( \frac{\partial U}{\partial X} ₌ [K]^{-1}\{\frac{\partial F}{\partial X} – [\frac{\partial K}{\partial X}]U\}\)              (Eq. 2-10)

ここで、\(\{\frac{\partial F}{\partial X} – [\frac{\partial K}{\partial X}]U\}\)は、擬荷重(pseudo-loads)として参照されます。

以上から、応答感度は、次式となります。

\(\frac{dR}{dx} ₌ \frac{\partial R}{\partial X} + \frac{\partial R}{\partial U}[K]^{-1}\{\frac{\partial F}{\partial X} – [\frac{\partial K}{\partial X}]U\}\)           (Eq. 2-11)

直接法は、最初に変位の感度\(\frac{\partial U}{\partial X}\)を計算し、それを、応答感度を構成する\(\frac{\partial R}{\partial U}\frac{\partial U}{\partial X}\)を計算するために使用します。この方法は、各設計変数に対する前進/後退代入(静的ロードケース解くことに等しい) を必要とします。

随伴法では、最初に\([K^{-1}]^T \{ \frac{\partial R}{\partial U}\}^T \)を計算してから応答導関数の第2パートを形成するために擬荷重でドット積を行います。剛性行列Kは対称行列なので\([K^{-1}]^T=[K]^{-1}\)であることに注意してください。この方法は各応答に対して前進/後退代入を必要とします。保持された応答の数が設計変数の数よりも小さい場合、随伴法はよいパフォーマンスを示すでしょう。GENESISは、デフォルトで最も効率の良い方法を自動的に選択します。擬荷重は要素毎に形成され、全体ベクトルに組み込まれます。可能かつ効率的な場合、感度計算の全てにわたり厳密な解析解のプロセスが使用されます。その他の場合、準解析的な技法が使用され、擬荷重は有限差分法(数値解)で計算されますが、残りの感度計算は完全な解析解です。

近似コンセプト

構造最適化の効率性に対する秘訣は、近似コンセプトに依拠します。最もシンプルな近似法は、次のように 目的関数と制約関数に対して線形近似を作ることです。

\(\tilde{F}(X)=F(X^0)+∇F(X^0)-(X-X^0)\)        (Eq. 2-12)

\(\tilde{g}_j(X)=g_j(X^0)+∇g_j(X^0)-(X-X^0)  j=1,M\)       (Eq. 2-13)

これらの近似は、設計を更新するためにオプティマイザーへ送られます。

これらの近似は、設計を更新するためにオプティマイザーへ送られます。実用上 設計変数に は 移動制限が課されるので、近似の適用領域を超える変更は為されません。

このような単純な線形化が繰り返えされるアプリケーションは「Sequential Linear Programming: 逐次線形計画法」と呼ばれ、有効な最適化戦略として 30 年近く使用されています。そして、構造設計の特定のケースでは、設計変数の広い範囲で有効な近似を作成できるアプリケーションです。

σ=F(A)/A で記述されるシンプルなロッド要素の応力の計算を考えてみましょう。設計変数Aに関して応力を線形化する場合、次式になります。

\(\tilde{σ}=σ^0+\frac{\partial σ}{\partial A}δA=σ^0+\frac{1}{A^0}\{ \frac{\partial F^0}{\partial A} – σ^0 \}δA\)         (Eq. 2-14)

式σ=F/A は、Aで非線形なので近似は A の小さな変化に限り有効です。ここで中間変数 X₌1/Aを使用すると、
σ= F(X)・Xとなりますので、 X に関する線形化は次式になります。

\(\tilde{σ}=σ^0+\frac{\partial σ}{\partial X}δX=σ^0+\{ F^0 + \frac{\partial F^0}{\partial X}X^0 \}δX\)         (Eq. 2-15)

式σ=F(X)・Xは 、Xで線形であり、F が X から独立に決定される静的なケースでは 、近似はXで正確に線形になります。オプティマイザーはXを設計変数としてあつかいます。近似最適化が完了したら部材断面積をA=1/ Xとして抽出します。

もう一つの例として、幅Bと高さHを設計変数とする長方形断面のビーム要素を考えます。断面特性(断面積A・断面二次モーメントI、ねじり定数J)を中間変数として扱い、それに基づいて近似応力と変位を計算できます。オプティマイザーが応力または変位の値を必要とする場合、最初に断面特性を設計変数 B および H の明示的な関数として計算し、線形化された量から応答を復元します。このようにして、設計変数に含まれる考慮すべき非線形性を維持しています。

中間応答を考慮して、さらに一歩進めます。ここでロッドの応力制約のために、ロッドの応力に代えて力Fを近似します。応力が必要な場合、まず要素の近似力を計算します。

\(\tilde{F}=F^0+\frac{\partial F}{\partial A}δA\)             (Eq. 2-16)

その後応力を\(σ\approx\frac{\tilde{F}}{A}\)として復元します。これは、逆数の形の変数Xを使用するよりも高品質な近似が示されます。

GENESISは、これらの近似の他、各種の近似を使用して、構造設計プロセスの全体的な効率性と信頼性を向上させています。重要なコンセプトは、元の問題の重要な数学的特徴を維持する限り、最適化問題をあらゆるベストな形式に自由に書き換えてもよいということです。高品質の近似を使用することで、最適化の間は近似関数だけが使用されます。このようにして、数値探索法を使用した最適化で必要となる多数回の有限要素解析の実行を回避しています。

ムーブリミット(移動制限)

GENESISは設計プロセスを進めるために高品質の近似を使用しますが、近似はFEMモデルが解析したモデルの正確な表現ではありません。そこで単一の設計サイクル中の設計変更が大き過ぎないよう制限することが重要です。これを行うために「Move limit:移動制限」が使用されます。移動制限は近似最適化の間に設計変数が変化できる量を制限することで、移動制限に達するとFEMモデルによる詳細解析が必要と見なされます。さらにGENESISは中間変数を使用し、要素断面特性に課された移動制限がテイラー級数展開で使用されます。一般に設計変数と断面特性は、設計サイクル中に最大50%変更できます。これは、単純な線形化手法を使用した場合に許容される設計変更の約 4~5 倍です。実際には、最適化プロセスが収束するにつれて移動制限が作動することはなくなりますが、初期の設計サイクル適切に進行させるための重要なテクニックです。

最適解への収束

最適化プロセスは反復的であるため、最適化の完了を判断しプロセスを停止する必要があります。GENESISはいくつかの方法で収束を検出し、プロセスを停止します。最も単純な方法はユーザーが定義した設計サイクル限度でプロセスを停止することです。デフォルトの設計サイクル限度は15回ですが、適切な初期設計が与えられたとすれば、同回数で最適解を得られるでしょう。

さらにGENESISは「Soft Convergence」と「Hard Convergence」と呼ぶ2つの収束評価を行います。Soft Convergenceは、例えば、設計変数にさらなる変化が生じないような設計改善が進行しないケースとして定義されます。このケースでは、設計変数に変化がなければFEM解析を実行して後続の繰り返しプロセスを行う必要がないものと判定されます。Hard Convergenceは、設計変数に明らかな変化があるけれども連続する2つの設計サイクル間で最適解をほとんど改善しないケースとして定義されます。このケースでは、設計変数が変化したので提案設計の品質を確定するFEM解析が行われた後にプロセスを停止します。

接触解析の最適化問題の場合、完全な接触解析が実行されなかった設計サイクルでSoft ConvergenceおよびHard Convergenceが起きた場合、警告メッセージを発しますが、プログラムは停止しません。

トポロジー最適

トポロジー最適は所与のパッケージスペース内に最適な材料配置を見出すために使用します。形状最適や寸法最適と違い、トポロジー最適は初期設計を必要としません。一般に設計は多数の有限要素で形成された材料ブロックの状態からスタートし、トポロジー最適がブロックから不要な要素を除去します。

トポロジー最適に関連する応答は限られます。それら応答は主に硬く軽量な構造を創成するために使用されます。

トポロジー最適は、通常、設計エンジニアが概念設計を実行するために使用します。トポロジーの最適化が終了したら、形状最適化や寸法最適化を実行してソリューションを改良できます。形状最適や寸法最適を実施するには、トポロジーが不要であると示した要素を削除して、解析モデルを再構築する必要があります。通常、再設計プロセスを容易にするためにSTL形式のトポロジー結果を使用します。

GENESISでは、トポロジー最適はパッケージスペースの各要素のヤング率と密度に連動する設計変数を生成します。その設計変数の値は、0.0から1.0の間を変動します。ここで1.0は要素に正規の剛性と質量があることを示し、0.0は要素に剛性と質量がないことを示します。要素の剛性と密度間の関係については、いくつかの異なる関係を利用できます。

トポロジー最適化は、静的構造解析・接触解析・固有値解析・座屈解析・熱伝導解析・動解析で使用できます。得られる結果は、変位・ひずみエネルギー・固有振動数・座屈荷重係数・温度・熱伝導コンプライアンス・動的変位・速度・加速度などの応答です。残りの解析結果(例えば、応力、ひずみ、要素力)なども利用できますが、理論的には設計変数の限界(0.0または1.0)でのみ有効であるため、参照解として使用すべきものです。その理由は、材料特性は変数ではないからです。これは保持する材料(設計変数が1.0に近い)と破棄する材料(設計変数が0.0に近い)を判別するための単なる方法です。

慣性モーメント・重心・質量分率(mass fraction)のような幾何応答も、トポロジー最適化で利用できます。 必要な場合、部材の最小/最大寸法・鋳造性・押出し・プレス・対称性などの製造要件を課すことができます。

トポグラフィー最適

トポグラフィー最適は、形状最適化の一種です。節点が選択面の法線方向に移動できます。文献では,トポグラフィー最適が「Bead design:ビード設計」と呼ばれることもあります。

GENESISは、選択面上の各節点に摂動(Perturbation)を自動的に生成します。摂動の方向は、面の法線方向です。摂動の最大量はユーザーが定義します。最適化プロセスの間、最適設計を得るために節点位置が変更されます。

設計モデルの制約または目的関数を構築するために解析モデルの構造応答を使用します。構造応答のうちシステム応答には、質量・体積・慣性モーメント、ひずみエネルギー・周波数があります。またグリッド点応答には、変位・速度・加速度・節点応力・温度の応答があります。要素応答には、応力・ひずみ・要素力の応答があります。

オプションとして、鏡面/回転対称性や押出しなどの製造制約を適用できます。ビード フラクション(Bead fraction)制約を適用して、トポグラフィー領域内のグリッドの一部のみを移動できるようにすることもできます。

フリーフォーム最適

フリーフォーム最適も形状最適の一種です。最も単純な形式では、ユーザーが指定した摂動ベクトル(perturbation vector)を複数の変動ベクトルに分割します。 その意図は形状変化の自由度を高めることです。

現在のGSAMでは、フリーフォーム最適は表面グリッドのみの移動に限定されます。GSAMは、選択面上のグリッドに摂動ベクトルを自動的に付与します。摂動方向は面の法線方向またはユーザー定義の方向です。ソリッドボディの面を指定することで、その面内のグリッドに摂動ベクトルが自動付与されます。最大摂動量はユーザーが定義します。最適化プロセスでは、最適設計を得るためにグリッド位置が変更されます。

設計モデルの制約または目的関数を構築するために解析モデルの構造応答を使用します。構造応答のうちシステム応答には、質量・体積・慣性モーメント、ひずみエネルギー・周波数があります。またグリッド点応答には、変位・速度・加速度・節点応力・温度の応答があります。要素応答には、応力・ひずみ・要素力の応答があります。

オプションとして、鏡面/回転対称性や押出しなどの製造制約を適用できます。グリッドフラクション(Grid fraction)制約を適用して、フリーフォーム領域内のグリッドの一部のみに移動を与えることもできます。

コース(Coarse)オプションを使用することで、近接要素で構成するグループ単位のグリッド形状最適化も行えます。グループはcoarse diameterで指定します。コース(Coarse)オプションを使用するメリットは、設計変数の数を低減し最適化計算のターンアラウンド時間を短縮できることです。

寸法最適

寸法最適では、シェル要素またはバー要素で構成されるボディ/パートの断面特性(断面寸法、断面積や断面二次モーメント)を最適設計できます。

GSAMは断面寸法に連動する設計変数を自動生成します。通常初期値は元の設計から自動取得されます。ユーザーは、設計が非現実的にならないように設計変数の上下境界を規定する必要があります。

デフォルトでは、シェルボディごとに一つの設計変数が生成されます。複数シェルボディの厚みを同じ設計変数でコントロールする際はリンク・オプションを使用できます。

寸法最適化のための解析応答は、トポグラフィー最適、フリーフォーム最適に同じです。

トポメトリ最適

トポメトリ最適化では要素単位の寸法最適化が行えます。寸法最適化できるプロパティ(シェルやバーの断面寸法等)の最適分布を見出すことができます。この機能は、ユーザーが設計変更に柔軟性が持てるように、問題に対する設計自由度を高めるものです。

既存構造上の薄肉シェル要素にトポメトリ最適を適用することで、剛性改善に有効な薄肉要素のみを維持するような使用も可能です。

製造制約については、鏡面対称、周期対称、押し出し、回転対称を課すことができます。

コース(Coarse)オプションを使用することで、近接要素で構成するグループ単位の寸法最適化も行えます。グループはcoarse diameterで指定します。コース(Coarse)オプションを使用するメリットは、設計変数の数を低減し最適化計算のターンアラウンド時間を短縮できることです。

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