はじめに
部分構造化は、有限要素のグループを行列として表わされる1つの要素に凝縮する手法です。この行列をスーパーエレメントと呼びます。GSAM/GTAMでは、ANSYS で生成したスーパーエレメントを GENESISの解析または最適化で使用できます。 スーパーエレメントを使用する利点は次のとおりです。
・計算時間の低減
・同じ計算資源で、より大きな問題を解ける
一般に非設計領域をスーパーエレメント化(縮退)します。GSAM/GTAM拡張でANSYSスーパーエレメントを使用する手順は、縮退パート/ボディがANSYS Mechanicalモデルの一部かどうかで異なります。
ケース1:縮退するパート/ボディがANSYS Mechanicalモデルの一部である場合
この場合ANSYSスーパーエレメントはANSYS Mechanicalの中で生成されます。それは、ANSYS CMSスーパーエレメント拡張経由(オートマチック)またはAPDLコマンド経由(マニュアル)のどちらかで生成されます。
ケース2:縮退するパート/ボディがANSYS Mechanicalモデルの一部ではない場合
この場合ANSYSスーパーエレメントはANSYS Mechanicalの外で生成します。通常ANSYS MAPDLで生成されます。
ANSYSスーパーエレメントを用いたGENESISの設定方法の詳細を、次のセクションで説明します。
ケース1:縮退するパート/ボディがANSYS Mechanicalモデルの一部である場合
この場合ANSYSスーパーエレメントはANSYS Mechanicalの中で生成します。その生成は、ANSYS CMSスーパーエレメント・エクステンション経由またはAPDLコマンド経由のどちらかで行います。GENESISシミュレーションを設定するための一般的な手順は次の通りです。
1.CMSスーパーエレメント・エクステンションまたはAPDLコマンド用いてANSYSの部分構造解析を定義する必要があります。
スーパーエレメントごとに1つのxxx.subファイルを生成します。xxx.subファイルは、ANSYS解析システムのソルバーファイルディレクトリに配置すべきファイルです。
2.Nastran DMIGファイルとしてANSYSスーパーエレメントをエクスポートするには、APDLコマンドを追加する必要があります。
剛性行列と質量行列をDMIGフォーマットでエクスポートします。このステップは、xxx.subファイルごとに、一つのxxx_stiffness.dmigファイルと一つのxxx_mass.dmigファイルを生成します。Nastran DMIGファイルをエクスポートするためのAPDLコマンドは下図の通りです。
注)出力するDMIGファイルは、次のように命名する必要があります。
xxx_stiff.dmig (剛性行列)
xxx_mass.dmig (質量行列)
ここでxxxはANSYSスーパーエレメントのファイル名(xxx.sub)を表わします。
3.ANSYS部分構造解析を実行します。
前ステップで述べたDMIGデータをエクスポートするAPDLコマンドが含まれたANSYS解析が実行できることを確認しておきます。
4.GENESISシステムのSE設定を定義します。
スーパーエレメントとして縮退したパート/ボディを指定する必要があります。SE SetupオブジェクトをGENEISシステムに追加するには、GENESIS Structural Optimizationツールバー上のSE Setupボタン()をクリックします。下図はSE Setupの詳細のイメージです。
Superelement Region Definitionで、スーパーエレメントとして縮退されたパート/ボディを選択できます。GSAM/GTAMは、エクスポートする際にこのパートを除外します。
除外パートを認識したGSAM/GTAMは、スーパーエレメントと縮退していないモデル間の境界に適切な接続を自動生成します。その接続は、―般にANSYS CMSスーパーエレメント・エクステンションで定義された自動MDOF選択で整合します。接触の場合、GSAM・GTAMはスーパーエレメントと非縮退モデル間の接触を生成します。リモート境界条件の場合は、RBE要素が生成されます。
5.GENESIS解析条件や最適化条件は通常通り定義します
ケース2:縮退するパート/ボディがANSYS Mechanicalモデルの一部でない場合
このケースでは、ANSYSスーパーエレメントをANSYSメカニカル外で生成します。一般にANSYS MAPDLを用います。GENESISシミュレーションを設定するための一般的な手順は次の通りです。
1.ユーザーは、ANSYSスーパーエレメントを定義するxxx.subを用意する必要があります。xxx.subは、ANSYS解析システムのソルバーファイルディレクトリに配置すべきファイルです。
2.ANSYS Mechanicalの内部で、スーパーエレメント(縮退モデル)と非縮退モデル間の境界節点のマッピングを用意する必要があります。
一つのxxx.subファイルに対し一つの節点マッピングが必要です。
※節点マッピングを定義するファイルは、次のように命名します。
xxx_grid.dat
ここでxxxは、ANSYSスーパーエレメントのファイルxxx.subを表します。
節点マッピングファイルのフォーマットは、次の通りです。
各フィールドは、スペースで区切られます。フィールド3~8 は任意です。スーパーエレメントの節点位置と出力座標系がMechanicalモデルの節点のそれと同じ場合は任意入力です。一致しない場合は、指定しなければなりません。
スーパーエレメント節点位置と出力座標系が非縮退モデルのそれと同じ場合、GSAM/GTAMはスーパーエレメント節点番号をモデル節点番号で置き換えます。
スーパーエレメント節点位置または出力座標系が非縮退モデルのそれと異なる場合、GSAM/GTAMは、各節点ペアを連結するためにRBE2を生成します。
節点マッピングファイルのサンプルを、以下に示します。
3.ユーザーは、ANSYSスーパーエレメントをNastran DMIGファイル形式で出力するためのAPDLコマンドを追加する必要があります。APDLコマンドは、xxx.subファイルごとに、一つのxxx_stiffness.dmigファイル(剛性行列データ)とxxx_mass.dmig(質量行列データ)を生成し、DMIGファイル形式で出力します。APDLコマンド内容は下図の通りです。
注)出力するDMIGファイルは、次のように命名する必要があります。
xxx_stiff.dmig (剛性行列)
xxx_mass.dmig (質量行列)
ここでxxxはANSYSスーパーエレメントのファイル名(xxx.sub)を表わします。
4.ANSYS解析を実行します。
ユーザーは、前ステップで述べたDMIGデータを出力するAPDLコマンドを有したANSYS解析の実行を確認しておく必要があります。
5.GENESIS解析条件や最適化条件は通常通り行います。