GSAMユーザーマニュアル

第14章 トポロジーとパラメトリックの同時最適

設計領域

トポロジー設計領域の最適化問題とパラメトリック(形状/寸法/トポグラフィー/トポメトリ/フリーフォーム)設計領域の最適化問題が同時に成り立ちます。

応答

全ての応答タイプを目的に使用できます。制約も全ての応答タイプを使用できます。トポロジー最適の目的とパラメトリック最適の目的は、一つの目的(index objective)に束ねられます。

トポロジー最適と寸法最適の同時最適

トポロジー最適化データと寸法最適化データを混合できます。寸法最適のプロパティ領域がトポロジー最適で同時に設計されます。下図はトポロジー最適と寸法最適の同時最適結果です。

トポロジー最適とトポメトリ最適の同時最適

トポロジー最適化データとトポメトリ最適化データを混合できます。ただしトポメトリ設計のプロパティ領域に、トポロジー設計を適用することはできません。

トポロジー最適と(トポグラフィー/フリーフォーム)の同時最適

トポロジー最適化データを、形状最適化データ、トポグラフィー最適化データ、フリーフォーム最適化データと混合できます。トポロジー最適の設計要素を、トポグラフィー最適/フリーフォーム最適でも設計できます。下図はトポロジーとフリーフォームの同時最適の結果です。

トポロジー最適とパラメトリック最適の同時実行:質量 vs. 質量分率

通常トポロジーだけの最適化問題では、質量分率(mass fraction (MASSFR))制約が使用材料を制限するために使用されます。一方でパラメトリックのみの最適化問題では質量制約(mass (MASS))が使用されます。そこで次のような疑問が生じます。
・トポロジーとパラメトリックを同時実行する場合、質量制約か質量分率制約のどちらがよいか?
・質量制約または質量分率制約のいずれかの使用が導く結果とは?
・質量制約と質量分率制約の両方の使用が導く結果とは?
これらの疑問に答えるために、はじめに質量分率に関する定義を示し、続いてケーススタディを示します。

Mass Fraction Definition:質量分率の定義
質量分率は、存在する質量を、そのトポロジー設計変数の全てが1.0に設定された際に持つ質量で割った値として定義されます。すべてのトポロジー設計変数が1.0 の場合に設計領域が持つ質量は、公称密度\(ρ_0\) に設計領域の体積を掛けた値に等しくなります。
形状/寸法/トポグラフィー/フリーフォームによってトポロジー設計領域の体積が増加または減少する場合、同じ質量分率応答値を得るには、総質量を増すか減らすかが必要です。
トポロジー設計領域がない場合、質量分率は常に1.0 です。つまり質量分率はトポロジー以外の問題には無用です。

ケーススタディ:質量制約と質量分率制約の比較

MASSのみ、MASSFRのみ、またはMASSとMASSFRの両方を同時に使用した場合の効果を理解するために、簡単な問題を示します。問題は、せん断荷重がかかる単純な長方形のプレートです。下図のように左側の角を固定し、右側の中央部に集中荷重を与えます。

6つのケース(1a、1b、2a、2b、3a、3b)を考察します。全てのケースで、目的関数はシングルロードケースでのひずみエネルギーの最小化です。制約は、次表の通りです。

ケース番号最適化タイプ制約タイプ
1aトポロジー質量(MASS)
1bトポロジーと形状の混成質量(MASS)
2aトポロジー質量分率(MASSFR)
2bトポロジーと形状の混成質量分率(MASSFR)
3aトポロジー質量(MASS)と質量分率(MASSFR)
3bトポロジーと形状の混成質量(MASS)と質量分率(MASSFR)

ケース 1: 質量(MASS)の制約のみ
設計は0.3の密度でスタートし、最終質量を初期質量以下に保つ必要があると仮定します。
ケース1a:トポロジー最適のみ

ケース1a:
質量分率(mass fraction)結果

ケース1b:トポロジー最適と形状最適の混成

ケース1b:
形状と質量分率(mass fraction)結果

1bの形状最適化は構造寸法を縮小しましたが、1a, 1bともに同じ質量制約を使用したので両方の最終的な質量は同じです。この結果、1bの質量分率の方が、1aの質量分率よりも高いことは明らかです。
一般にトポロジーと形状の混成問題では、パラメトリック最適化が構造寸法を小さくすれば、同じ質量の場合、得られる構造の質量分率は初期の質量分率よりも高くなるでしょう。逆にパラメトリック最適化が構造寸法を増加すれば、最終構造の質量分率は初期の質量分率よりも低くなるでしょう。

ケース2: 質量分率(Mass Fraction)制約のみ
設計は0.3の要素密度で始まり、質量分率の制約を維持する必要があると仮定します。
ケース2a:トポロジー最適のみ

ケース2a:
質量分率(mass fraction)結果

ケース2b:トポロジー最適と形状最適の混成

ケース2b:
形状と質量分率(mass fraction)結果

2bの形状最適化は構造寸法を縮小しましたが、2a, 2bともに同じ質量分率制約を使用したので両方の最終的な質量分率は同じです。この結果、2bの質量の方が、2aの質量よりも小さいことは明らかにです。
一般にトポロジーと形状の混成問題では、パラメトリック最適化が構造寸法を小さくすれば、同じ質量分率の場合、得られる構造の質量は初期の質量よりも小さくなるでしょう。逆にパラメトリック最適化が構造寸法を増加すれば、最終構造の質量は初期の質量よりも大きくなるでしょう。

ケース3: 質量制約(Mass)制約 と 質量分率(Mass Fraction Constraints)制約
質量制約と質量分率制約を同時に使用します。
ケース3a:トポロジー最適のみ

ケース3a:
質量分率(mass fraction)結果

Case3b:トポロジー最適と形状最適の混成

ケース3b
形状と質量分率(mass fraction)結果

3aと3bの両方で同じ質量分率制約と同じ質量制約を使用。形状最適化は構造寸法を縮小したため質量制約は非活性となり、最終結果は質量分率の制約が導く形となりました。
一般に質量と質量分率の両方の制約を使用する同時最適化問題では、パラメトリック最適化が構造寸法を縮小すれば、質量分率の制約が支配的であり、得られる構造質量は初期の質量よりも小さくなるでしょう。一方、パラメトリック最適化が構造寸法を拡張すれば、質量制約が支配的になり、最終構造の質量は初期質量と同じになるでしょう。

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